体験的な環境学習のススメ

深刻な地球環境問題

わたしたちが暮らすうえで営まれている社会経済活動は、生活を物質的に豊かにした一方で、地球環境に様々な負担を生じさせています。
その結果、ごみ問題など地域特有な環境問題だけでなく、地球規模での気温上昇や異常気象、海面上昇などの気象変動(地球温暖化)や、みどりや生き物の多様性の損失をひき起こすことにつながっています。
今この状況に歯止めをかけなければ、地球環境は悪化の一途をたどることになります。その影響は、一定地域のみならず、将来の世代にまで及ぶ深刻な問題です。

これらの環境問題は、わたしたちの社会経済システムやライフスタイルの変化など事業活動や日常生活に起因しています。わたしたちは、事業活動や日常生活と環境問題との関係を正しく理解し、自らの行動に環境への配慮を織り込み、社会経済システムやライフスタイルを環境への負荷の少ないものに転換していかなければなりません。

環境教育とESD

ESDは、Education for Sustainable Developmentの略で、持続可能な社会を実現するための教育という意味です。
ESDは、そのための課題を知り、その原因と向き合い、その解決のためにできることを考え、行動につなげる学びです。

環境教育にESDの視点を取り入れることにより、環境に対するさまざまな知識が得られ、事業活動や日常生活と環境問題との関係をより正しく理解でき、環境へ配慮した行動に自ら取り組むようになります。
環境教育は、幼児期から始め、小学生、中学生、高校生、大学生と体系的に進めることが大切です。

ESDを育てる体験学習

ESDを進めるうえで欠かせない学習活動は、体験学習です。
体験学習では、五感、「見る(視覚)」「聞く(聴覚)」「味わう(味覚)」「嗅ぐ(臭覚)」「触れる(触覚)」を働かせることが基本的な体験となります。

体験学習は、五感を磨く機会を増やし、(1)問題発見/解決能力、(2)情報収集/活用能力、(3)コミュニケーション能力、(4)合意形成能力などの能力を育て、子どもたちが、日常のなかでの体験をとおして得られた気づきや学びを繰り返すことにより、自ら主体的に考え判断し行動する力を育て、自ら変化や成長を生み出していく出発点となるものです。

自然体験のすすめ

子どもたちが、環境に配慮した生活行動をごく自然にできるようなになるには、まず自然にふれることから始まります。自然体験は、自然物(野鳥、野草樹木、昆虫、地質など)にふれることから始まります。
そのため、できるだけ幼少の頃から野外での自然体験的な学びに取り組むこと、そして“自然にふれ五感で感じる→自然に関心をもつ→自然のしくみについて理解する→自然とひととのさまざまな関係について理解する→自然とひととが共生するためにはどうすべきか考える→環境保護の必要性について理解する→環境行動につなげる”、というプロセスにしたがって段階的に学ぶことが最も効果的です。

かくして、自然体験は、子どもたちが、すべての生き物とのつながりやその仕組みを理解し、「多様性」や「共生」という考え方を身につけることできるようになります。この「多様性」や「共生」という考え方は、現在地球上で深刻になりつつある様々な環境課題に取り組むうえで最も大切なのです。

地域を活動対象とする体験学習

教育基本法の第2条第5号には、伝統文化を、「五 伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度をやしなうこと」と規定されています。
また、学校基本法にも、第21条第3号に、「三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度をやしなうとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度をやしなうこと」、と書かれています。

地域に残る伝統文化について体験的に学習し、その価値を深く理解し、地域への愛情やほこりを育てることにより、子どもたちの普段の生活のなかに伝統文化やまちの歴史が自然に取り入れられることになります。また、この学習は、異文化を理解し大切にしようとする心を育て、国際社会に生きていく上で大切です。

以上述べたように、体験学習はさまざまな特色を持ち、環境学習の方法としてより効果的なのです。